滋賀大学大学院派遣1年目を終えて

滋賀大学大学院派遣1年目を終えて

  • 2020.11.18

マクロミルでは、「リサーチ×データ」の会社を目指すべく、2017年にデータサイエンス分野の人材育成、マーケティング実務の意思決定に活かすデータサイエンスの研究などを目的に滋賀大学と研究開発分野の提携をしました。(プレスリリースはこちら
昨年から小西伶児さん、坂口雅哉さんの2名を滋賀大学大学院データサイエンス研究科へ派遣しています。現在も修士研究に励んでいるお二人ですが、これまでに得た学びや今後の目標などをお聞きしました。

どのような経緯で派遣が決まったのでしょうか?

小西さん:社内公募があった訳ではないのですが、以前から大学院に行きたいという話は上司としていました。そもそも入社前に大学院進学か、就職かで悩んでいたのですが、大学院に行ったとしても自分の仕事に役立てることが学べないと嫌だなと思っていたため、その時は就職すると決めたんです。その話を覚えていてくださって、今回お話をいただけたのだと思います。

坂口さん:3年ほど集計周りの業務や、リーダー業務を学び、薄く広くスキルは身に付いたと思う一方で、これからどういうキャリアを築いていこうか悩んでいました。そんな時に、上司の橋本さんからお声かけいただきました。マクロミルが持つデータはもっと様々なところで活用できるんじゃないかと以前から思っており、きちんと学んだ上でそれを知りたいという気持ちがあったため、通学を決めました。

大学院に行く前のスキルセットはどのようなものでしたか?

小西さん:大学時代の専攻は、社会工学という分野です。教養科目の一つとして数学は勉強しており、それを活用して社会問題をどう解決するかということを学んでいたのですが、主に経済学の理論を専門にしていたため、本格的なデータ分析は行っていませんでした。入社後は3年間リサーチャーを経験したものの、分析をゴリゴリやった経験はあまりなかったため、自分が理解しきれていない分析の手法を実行・提案するのは不安が大きいといった状況でした。

坂口さん:大学時代は情報科学が専攻でした。プログラミングやソフトウェア開発のフローについて学部で学び、ゼミでは情報科学の中でもマーケティングの文脈で統計学を学んでいました。「R」という統計処理ソフトを使用していたのですが、中身のロジックは全く分からないまま使っていましたね。入社後は、購買データ周りの集計業務に加え、教育、リーダー、窓口業務を行っていました。幅広く色々なことを経験させていただいた一方で、もっと一つのことに深く特化もしたいなという気持ちもありました。

大学院では主にどんなことを学びましたか?

小西さん:1年目は、ほぼ講義を受けていたのですが、最初は「教師あり学習」と「教師なし学習」※で基本的な機械学習を広く学び、その後「データ分析」という分野について浅く広く学習するという感じでした。もちろんすべてが必修という訳ではないのですが、様々なカリキュラムが用意されており、好きな科目を取ることができました。

教師あり学習 問題と正解がセットになったデータを使うことで、コンピューターに学習させる方法。

 教師なし学習 膨大な入力データの中から、コンピューター自身が自分でその特徴や定義を発見していく方法。

坂口さん:後期は、テキストデータ解析を研究をしていました。大学院での研究はもちろんですが、多くのデータがあるマクロミルでもテキストデータの解析を今後進めていきたいという話は挙がっていたため、社内にいるベテランの方からも勉強させてもらっていました。

修士研究ではどのようなことを学んでいるんですか?

小西さん:修士論文で扱っているのは「統計的因果探索」という分野です。データの中から因果関係の向きや大きさなどの仮説を得るために、どんな仮定を置けばよいのか、どのように分析すればよいのかといった、因果関係に関する仮説を得るための方法論を研究しています。この方法論を使えるようになると、例えば商品を買ってもらうためにどんなイメージや意識を形成したらいいのかといったことが、有向グラフで表現されるため、生活者行動の因果関係の仮説を案件関係者間で議論しやすくなります。

坂口さん:小西さんが理論の拡張であるのに対し、僕は実際のデータを活用しながら研究を行っています。テキストデータを分類する手法を研究して、実際にマクロミルにある過去の調査データを使って調査票を商材別に分類できないかを模索しています。調査票に書かれている日本語をどのようにベクトル化するのかや、教師あり学習を使って、調査票内の選択肢を分類できないかを学んでいます。指導教官だけではなく、社内で詳しい方にも都度伺いながら進めています。

大学院に行って大変だったことを教えてください。

小西さん:データサイエンス研究科という所属なのですが、「データサイエンス」ってものすごく世界が広いんです。マーケティングリサーチには登場しないような話も当たり前のように出てくるため、最初の2カ月くらいはどこから手を付けて、何を持ち帰れば良いのか全く分からずとても苦労しましたね。

坂口さん:新しい分野のため、正解がないというのが大変でした。考え方の過程を導き出すためには、数学や数式を使いこなせることが必須で、高校の数学で使ったような内容が沢山出てきましたね。記憶を呼び戻しながらやっていたものの、ついていけなかったこともあり、高校の時ちゃんと勉強しておくべきだったなと後悔しました(笑)。

大学院に行って良かったと思うことは何ですか?

小西さん:僕らの他に、社会人派遣の方が20名ほどと、学部生上がりの方が3名いたのですが、その方々と交流を深めたり、大学の教授とビジネスの話を議論できたりしたのは、とても良い経験になりましたね。でもやはり1番は、丁寧に新しい知見をインプットする時間を十二分にいただけたことに尽きるかと思います。

坂口さん:僕も小西さんと同じで、実務から離れてじっくり勉強する時間をいただけたことです。会社では、業務以外でスキルアップの機会はあったものの、学んだことをかみ砕いて解釈する時間がなかったなと感じていました。そんな中で大学院に行けたので、とにかく時間は価値だなと改めて実感しました。

1度社会人を挟んで大学院へ行けたメリットはありますか?

小西さん:勉強しなきゃいけないことに対する濃淡はつけやすかったですね。仕事でこれが必要だから、自分はこういうスキルを身につけたいという目標がちゃんとあったため、モチベーションは維持しやすかったです。

坂口さん:学部からそのまま大学院に行っていたら、この手法って何に使えるのだろうと悩んだまま就職して、その結果大学院の研究等何も使わず、関係ない仕事に就いていたんじゃないかと思います。「こういうデータがあって、それを使って会社に貢献できる」というイメージがしやすかったのは、1度社会人を挟んだメリットかなと思います。

お二人の今後の目標を教えてください。

小西さん:理論をきちんと勉強できたため、今後は分析のクオリティー担保をしっかりとやっていきたいです。また、データコンサルティング部のブランディングにも力を入れていけたら良いなと思います。社内から気軽にご相談をいただけるポジションになりたいですし、外向けにはコンサルティングという機能がマクロミルにもできるんだと知ってもらい、その実績を積み上げていきたいです。

坂口さん:2つあるのですが、1つは現場と開発者をつなぐ窓口としてのキャリアを高めていきたいということです。現場で困っていることを聞いた上で、それをどういう手法で解決できるのか、実現可能性はどのくらいなのか、きちんと判断できる人材になりたいです。もう1つは次世代の人材育成です。新入社員の方に自分が学んできたスキルを共有して、しっかり育てていくことはもちろん、機械学習やツール作成の部分でも人材育成できるような存在になりたいです。